PDFの編集にはいろんな種類がある
- PDF文書には、閲覧者の利用範囲を制限するためのセキュリティー設定(オーナーパスワードといいます。詳細は:参考資料「PDFの標準セキュリティ機能」)ができます。セキュリティー設定で編集禁止になっていないPDFに対しては次のような編集ができます。
- PDFの本文への文字、画像や図形などの削除、挿入ができます。こうしたPDFの一部分だけを変更する編集操作をタッチアップといいます。
- 注釈を加えることができます。注釈にはいろいろな種類があり、テキストを上に重ねたり、図形や画像を描けます。
- PDFの作成者が、フォーム(アクロフォーム)をPDFに設定していれば、受領者はそのフォームに文字を記入できます。
- 別々に作成したPDFファイルを一緒に結合したり、ひとつのPDFファイルを分割したり、PDFのページを入れ替えるようなページ編集ができます。
- 配布するPDFの一部を塗り潰して、その下の文字や画像を見えなくすることを墨消しといいます。墨消しには特別な注意が必要です。
- PDFには見出しを集めたしおり(ブックマーク)を付けることができます。しおりを設定したり、しおりの項目の追加などもPDF編集の範疇です。
アドビのAdobe ReaderはPDFを開いて閲覧するためのソフトウエアですが、パソコン版では注釈の追加や変更、フォームの入力や保存ができます。アドビのAcrobatでは、上のような編集がすべて可能です。
Acrobat Webとは何ですか?Acrobat Webを使用してPDFを電子署名とパスワード保護に変換するにはどうすればよいですか?
PDF編集の注意点
注釈の注意事項
注釈には、ノート注釈、テキスト注釈(いずれもAdobe Reader上の名称)など多くの種類があります。プリンターを使うと、画面で見たのと同じように注釈を印刷できます。しかし、印刷会社やプリントオンデマンドで印刷するためのPDFでは本文で注釈を使用してはいけません。その理由は次のとおりです:
- 注釈の多くは、PDF本文へのコメントなどを追記・交換するための目的で使うもので、ページの指定位置に付随する情報の扱いです。注釈の位置を変えたり、削除したりする操作が簡単にできてしまいます。
- 注釈の表示スタイルはPDFの仕様で厳密に決まっておらず、ビューアによって表示できなかったり、再現性が異なる場合があります。
フォームの注意事項
Adobe Readerなどを使えば、PDFのフォーム(テキストフィールド)にテキストを入力できます。フォームを作成したAdobe Acrobatで許可されていれば、入力したテキストを埋め込んだ状態の新しいPDFを作成できます(Adobe Readerのみの機能)が、それ以外のPDFでは、入力したフォームの情報だけを取り出して専用のファイル形式で保存したり、メールなどで送ることだけです。
タッチアップでの注意事項
タッチアップという言葉は一般的には塗装などで仕上げた箇所を修理することを意味します。PDFはもともと文書を印刷する状態に仕上げた結果を電子的なファイルとして保存し、これを配布しているものです。つまり、PDFの作成時には、見た目のレイアウトが重要です。配布されているPDFファイルの中ではデータがどうなっていようが問題にされません。このためPDFの編集はうまくできないこともありました。PDFによっては編集操作を行なうと全体のレイアウトが崩れてしまうなどの問題が起きます。古いPDF編集ソフトを使って、タッチアップで文字を挿入すると、テキストの並びがその行をはみ出しても改行は起こらず、ページの印刷領域をはみ出したりしてもそこで改ページは起こりません。但し、PDF編集ソフトも進化しており、最新のソフトウエアではこうした機能に改良が見られます。こうして、最近のPDF編集ソフトは、タッチアップという言葉よりもPDF直接編集という用語を使うことも多くなっています。
注意すべきこととして、PDFにフォントが埋め込まれている場合、埋め込まれているフォントを編集に使うにはフォントのライセンスが必要です。一般には、埋め込まれたフォントはPDFの表示・印刷だけを許可されているものが多く、編集には使えません。同じフォントが利用できない場合、新しく入力したテキストは元からあるテキストとは異なるフォントが指定され、文字の外観が変わってしまいます。
PDF の画像またはオブジェクトの編集
PDF への画像またはオブジェクトの配置
この文書では、Acrobat DC を使用した、PDF の画像およびオブジェクトの追加、サイズ変更、移動または置換の方法を説明します(PDF のテキストの編集と書式設定またはスキャンされた PDF の編集方法に関する情報を探している場合、上の適切なリンクをクリックしてください)。
- Acrobat で PDF を開き、ツール/PDF を編集/画像を追加 を選択します。
- 開くダイアログボックスで、配置する画像ファイルを指定します。
- 画像ファイルを選択して「開く」をクリックします。
- 画像を配置する位置でクリックします。または、配置する場所でクリックしたままドラッグして、画像のサイズを指定します。
- 画像ファイルのコピーが、元のファイルと同じ解像度でページに表示されます。
- 境界ボックスのハンドルを使用して画像のサイズを変更したり、右側のパネルの「オブジェクト」のツールを使用して画像の反転、回転またはトリミングを行います。
画像またはオブジェクトの移動とサイズ変更
1.Acrobat で PDF を開き、移動したいものの種類に応じて適切なツールを選択します。
画像:ツール/PDF を編集/編集 を選択します。編集可能な画像の上にポインターを置くと、画像アイコンが左上隅に表示されます。
インタラクティブなオブジェクト:フォームフィールド、ボタンなどのインタラクティブなオブジェクトを編集するには、ツール/リッチメディア/オブジェクトを選択 を選択します。
2.次のいずれかの操作をおこないます。
画像またはオブジェクトを移動するには、対象を目的の場所にドラッグします。画像またはオブジェクトを別のページへドラッグすることはできません(切り取って別のページに貼り付けることはできます)。移動方向を垂直または水平に制限するには、Shift キーを押しながらオブジェクトをドラッグします。
画像またはオブジェクトのサイズを変更するには、対象を選択して、ハンドルをドラッグします。元の縦横比を維持するには、Shift キーを押しながらハンドルをドラッグします。
画像の回転、反転、トリミング(クリップ)および置換
- Acrobat で PDF を開き、ツール/PDF を編集/編集 を選択します。
- 画像の選択 – 画像をクリックして選択します。
- 右側のパネルの「オブジェクト」で、次のいずれかのツールをクリックします。
- 上下反転 水平軸上を縦方向に画像を反転します。
- 左右反転 垂直軸上を横方向に画像を反転します。
- 左 90°回転 選択した画像を反時計回りに 90°回転します。
- 右 90°回転 選択した画像を時計回りに 90°回転します。
- 画像をトリミング 選択した画像をトリミングまたはクリップします。選択ハンドルをドラッグして画像をトリミングします。
- 画像を置換 画像を指定し、選択した画像を置き換えます。開くダイアログボックスで置換後の画像を指定し、「開く」をクリックします。
画像またはオブジェクトを他の要素の前面または背面に移動
「重ね順」オプションを使用して、画像またはオブジェクトを他の要素の前面または背面に移動できます。ページ上の要素の重なり順序で、項目を 1 つ前または後に移動したり、最前面または最背面に移動したりできます。
- Acrobat で PDF を開き、ツール/PDF を編集/編集 を選択します。
- オブジェクトの選択 – オブジェクトをクリックして選択します。
- 右側のパネルの「オブジェクト」で重ね順 をクリックし、適切なオプションを選択します。または、オブジェクト(複数可)を右クリックし、「重ね順」にポインターを置いて、適切なオプションを選択することもできます。
画像またはオブジェクトの整列
右側のパネルのオブジェクトを整列 オプションを使用すると、複数のオブジェクトを特定の側に正確に整列できます(「左揃え」、「上下中央揃え」、「右揃え」、「上揃え」、「中央揃え」および「下揃え」)。
複数のオブジェクトの端を揃えて整列する場合、そのうち 1 つのオブジェクトは移動しません。例えば「左揃え」オプションでは、最も左にあるオブジェクトの左端を基準として、選択したすべてのオブジェクトの左端をそこに揃えます。最も左にあるオブジェクトは動かず、他のオブジェクトがそのオブジェクトを基準として整列されます。
「中央揃え」オプションでは、選択した全オブジェクトの中心を水平方向に整列し、「上下中央揃え」オプションでは、選択した全オブジェクトの中心を垂直方向に整列します。このときの整列の基準となるのは、選択した全オブジェクトの元の位置の平均をとった水平線または垂直線です。既にその水平線または垂直線上にあるオブジェクトは動きません。
選択した整列オプションに応じて、オブジェクトは上、下、左または右の方向に直線的に移動しますが、既にその位置にあるオブジェクトと重なることがあります。重なった場合は、その整列操作を取り消すことができます。
- Acrobat で PDF を開き、ツール/PDF を編集/編集 を選択します。
- オブジェクトの選択 – Shift キーを押しながらオブジェクトを 1 つずつクリックします。
- 右側のパネルの「オブジェクト」でオブジェクトを整列 をクリックし、適切な整列オプションを選択します。または、オブジェクト(複数可)を右クリックし、コンテキストメニューの「オブジェクトを整列」オプションにポインターを置いて、サブメニューから適切な整列オプションを選択することもできます。
Acrobat 以外での画像の編集
1.Photoshop、Illustrator、Microsoft ペイントなど、別のアプリケーションを使用して画像またはグラフィックを編集できます。画像またはグラフィックを保存すると、変更内容が反映され、自動的に PDF が更新されます。編集に使用するツールメニューに表示されるアプリケーションは、インストールされているアプリケーション、および選択した画像またはグラフィックの種類によって変わります。使用するアプリケーションを指定することもできます。
2.Acrobat で PDF を開き、ツール/PDF を編集/編集 を選択します。
3.画像またはオブジェクトを選択します。
注意:同一のファイルで複数の項目を同時に編集する場合は、項目を複数選択します。ページ上のすべての画像およびオブジェクトを編集するには、ページを右クリックして、「すべてを選択」を選択します。
4.右側のパネルの「オブジェクト」で編集に使用するツール をクリックし、エディターを選択します。メニューに示されている以外のエディターを選択するには、「アプリケーションを指定して開く」を選択し、アプリケーションを指定して「開く」をクリックします。
注意:ICC プロファイルに変換するかどうかの確認メッセージが表示されたら、「変換しない」を選択します。画像ウィンドウに格子模様が表示された場合、画像データは読み取られていません。
- 外部の編集アプリケーションで必要な変更を行います。次の制限事項に注意してください。
- 画像のサイズを変更すると、PDF 内で画像が正確に揃わなくなる可能性があります。
- 透明度情報は、インデックスカラースペースにインデックス値として指定したマスクに対してのみ保存されます。
- Photoshop を使用する場合は、レイヤー構造の画像を統合します。
- 画像のマスクはサポートされません。
- 画像編集中に画像モードを変更した場合は、元のモードにのみ適用できる有効な情報を失う可能性があります。
5.編集用アプリケーションで、ファイル/保存を選択します。オブジェクトが自動的に更新され、Acrobat を前面に表示すると PDF 内のオブジェクトも更新されています。
注意:画像が Photoshop 6.0 以降でサポートしている形式の場合、画像の編集結果は PDF に反映され保存されます。ただし、画像が Photoshop 6.0 以降でサポートされている形式でない場合、画像は汎用 PDF 画像として処理され、編集された画像はディスクには保存されますが、PDF には反映されません。
PDF の画像を別の形式に書き出す
ファイル/書き出し形式/画像/[画像形式] コマンドを使用して、各ページ(ページ上のすべてのテキスト、画像およびベクトルオブジェクトを含む)を画像形式に保存することができます。PDF の各画像を個別の画像ファイルに書き出すこともできます。
PDFをWordやExcel形式に変換して編集する方法も
PDFには文字や画像を再現性よく配置する情報は含まれていますが、例えばワープロ(Wordや一太郎)や表計算ソフト(Excelなど)のファイルのように、文書として編集が確実にできるような構造になっていません。そこで、文字列などの配置を解析して、WordやExcelなどのファイルに変換してしまうソフトウエアやサービスがあります。これらを利用すると、PDF文書の再利用が思いのほか手軽にできます。